この季節になると毎年やってくるのが自動車税の通知ですね。

当たり前のように払っていますが、今回は主要国の自動車税の実情を浅く探ってみました。

まず、アメリカですが、アメリカの法制度には日本の自動車税に相当する、排気量に直接かかる税金が存在しないそうです。

そのため、必然的にモアパワーの要求=より大きな排気量という図式となり、1955年前後〜1970年代までのフルサイズ全盛期には排気量は最大で8000cc以上にまで達しました。アメ車=パワーのイメージはこのような背景も手伝って作られたようです。

代わりに、排気量に直接かかる税金は存在しないものの、毎年払わなければならないのが”ナンバープレート代”

アメリカ在住の日本の方の情報によれば、「毎年支払わなければいけない自動車税、正確にはナンバープレート代の請求が郵送されてきました。私の場合、ウィスコンシン州に住んでいるので、州のDOT(日本の運輸局に当たる)から45ドル(約5600円)の請求がありました。」

だそうです。国土が広大という事情はありますが、ガソリンは安い・自動車税に相当するぜいい金もないので、車の所有はしやすそうです。自動車産業の発展を邪魔しないアメリカらしい税制ですね。

次にイギリス。

10年ものの1800ccの乗用車では年間180ポンド(約3万6千円)ほど徴収されます。半年払いの場合は100ポンドほど(約2万円)。日本と税額はそれほど変わらない感じです。

また車検費用に関しては、イギリスの車検は”4年目”からだそうです。

イギリスの車検は新車は最初の3年間は免除で、4年目から毎年受けねばなりません。

スキームそのものも日本の税制に似ていますね。

また、ドイツではドイツ独特の”ヒストリック登録”というものがあります。

その内容は、クルマが30年以上古くて、オリジナルの状態を保っていることが車検で証明されれば、そのクルマは工業製品文化遺産ということになり、ナンバー末尾にH、すなわちヒストリック・ナンバーが発行される。

そうするとその車両に関わる自動車税は一律およそ1万8千円で済むそうです。

なかなかユニークなスキームですね。

中国の自動車税はどうかといえば、日本と同様に排気量ごとの自動車税を設定しています。

(1元=¥16として換算)
1000cc以下                    60-360元(¥960-¥5700)
1001cc以上1600cc未満   300-540元(¥4800-¥8600)
1601cc以上2000cc未満   360-660元(¥5700-¥10500)
2001cc以上2500cc未満   660-1200元(¥10500-¥19000)
2501cc以上3000cc未満 1200-2400元(¥19000-¥38000)
3000cc以上には高税額を設定しています。

金額も安くシンプルに設定していますね。大都市ではナンバー取得に半年かかるほど、爆発的な車の販売台数を促進しています。

これら主要国の税氏をご覧になって、皆さんはどの様に感じますか?

一般的には日本の自動車関連税は高いと言えるようです。

どれくらい高いかというと、アメリカの31倍という数字が一番わかりやすいのですが、「アメリカは国際的に見て安すぎる」という反論もあるかもしれないので、ドイツと比べて約2.8倍、イギリスと比べても約2.4倍高い…という状況を考えると、日本の自動車ユーザーが置かれている悲しい状況が理解しやすくなるとおもいます。

自工会が計算したところによると、1.8L、1.5t未満の乗用車を新車で購入し、年間1000Lのガソリンを使って13年間乗り続けた場合、その13年間に支払う税金は170万円4000円になる試算があります。結構高額ですね!

これは「維持費」全体の話ではありません。

この試算額にはガソリン代も車検費用も高速道路代も整備費も入っていないのです。

税金だけで(平均使用年数である13年間で)170万4000円支払っています。

これは年平均で13万1000円となり、スマホ利用料がだいたい1年間で7万6000円だということを考えると、クルマ保有者はその2倍以上の金額を税金だけで払っていることになります。

*景気は踊り場・踊り場の繰り返しで一向に収入が上がらない。

*車の安全装備や各種性能が上がってクルマそのものの価格が上がっている。

*数々のセンサーを配置して、コンピューター制御を行っているので、チェックランプが点灯すれば、その修理費が高くつく。

などなど、若者を中心に車離れが起きるのもうなずけます。

これらの事情に加え、車にまつわる税金が高すぎる現状があります。

そもそも「クルマを持っているということはお金持ちなんだろう→お金持ちからはたくさん税金を取ってもいいだろう」という発想が続いており、それに文句を言わずに払い続けてきたことが現在の「高すぎる車体課税」を支えているとの指摘もあます。

個人ユーザーの負担が増えれば、買い替えサイクルの長期化を招くとともに、自動車産業を衰退化させてしまいます。乱暴な言い方で恐縮ですが、「生かすも殺すも税制次第」です。

マイナス2兆円、9万人の雇用減

自工会をはじめとした多くの自動車関連団体が「いま自動車関連諸税を下げないと大変なことになる」と言っているのは、さらなる事情があるようです。

2019年10月には消費税増税が控えており、このまま自動車関連諸税が据え置きで消費税が10%となった場合、(反動の買い控えで)国内新車市場は取り返しのつかないダメージを受ける…という予測が各所から出ています。

1997年に消費税が3%から5%に上昇した時は国内販売が約100万台減少した。2014年の5%から8%上昇時には約75万台減。

今回の8%から10%上昇では、約30万台の販売減が見込まれています。すでにある大手の自動車メーカーでは減産体制を組んでいるようです。

ただでさえ危機的状況にある国内新車市場で、さらに約30万台減ると、経済効果はマイナス2兆円、9万人の雇用を奪う…というシンクタンクの予測もあります。

日本経済の「底」が抜けてしまう数字とも言われています。

車は必需品であり、インフラであり、現実には、特に地方在住者、それも子育て世代にとってクルマは生活必需品であり、日本の車体課税はそうした層を苦しませ続けています。

子育て世代への緩和措置は将来への大きな投資です。待機児童対策・高校の無償化などの政策には賛成ですが、古い税制の抜本的な見直しは産業の育成を促し、国力を強化することにつながることを忘れないでいただきたいと思います。

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