以前にも述べましたが、ハイブリット人口が爆発的に増加した背景にはプリウスの功績が大きいといえます。

一言でいえば環境性能のみならず、そのデザインの先進性はファッションへと昇華し、大ヒットに繋がったと言えます。

イブリッド車(HV)の代名詞的存在であり、トヨタの国内販売を支える基幹車種です。

2015年末に登場した現行4代目はカタログ値ながら最高40km/L(ガソリン1リットル当たりの走行距離、JC08モード、以下同じ)という高い燃費性能と斬新な内外装デザイン、安全技術をはじめとする先進的な装備の数々などを備えています。

国内の販売台数の推移では、2017年、プリウスの国内販売台数は約16万台と日本自動車販売協会連合会(自販連)がまとめている乗用車ブランド通称名別ランキング(軽自動車除く)で1位。2位の日産自動車「ノート」(約13.8万台)や3位のトヨタ「アクア」(約13.1万台)などを抑え、2年連続でトップを守っています。

月販平均台数は約1万3400台で、現行モデル発売時の月販目標台数1万2000台を上回っている状況です。

一方で、前年比でみると35%減。新車効果が一巡したとはいえ、その落ち込み幅は小さくはないようです。

水準を見ると一時は年間30万台を超えた先代3代目の半分強程度にとどまっています。

今年に入って1~2月は乗用車ブランド通称名別ランキング(軽自動車除く)で、日産「ノート」にトップの座を奪われ、2位に転落しました。

かつての隆盛を考えると、4代目の販売はいまいち勢いに欠けた感はぬぐえません。

現行4代目プリウスが正式発売となったのは2015年12月。同年9月から予約受注販売を開始しており、正式発売してから半年以上の間は大量のバックオーダーを抱えていました。

3代目は2009年5月のデビューから20カ月もの間、乗用車ブランド通称名別ランキングの首位に立ち続けましたが、4代目はその半分の期間となる当初10カ月しかトップを守れなかったようです。

一時は半年以上納車待ちにもなった4代目は現時点でほとんど即納状態のようで、年度末決算のセール中ともあって値引き額も大きいと言われ、また、業者オークションでの出品台数も多くみられるようになっています。

これは、ディーラー名義で初度登録を行い、代車などで短期間使用した走行距離の少ない中古車などが、トヨタ系の枠を超えた中古車専業店でもみられる事が証明しています。

では、ハイブリッド車の需要にどのような変化が起きているのでしょうか?

4代目プリウスが国内乗用車の絶対王者といえる存在ではなくなってきているのには、いくつかの要因があると指摘されています。

1.ハイブリッド車種の拡充

まず、3代目の時代よりもトヨタ自体のハイブリッド車の選択肢が増えた点です。自販連によれば、2017暦年の乗用車ブランド通称名別ランキングのトップ10内にトヨタ車は計6車(「プリウス」「アクア」「C-HR」「シエンタ」「ヴィッツ」「ヴォクシー」)がランクインしています。

これらはいずれもハイブリッド車仕様をラインナップしている。つまりトヨタ内でもそれだけハイブリッド車の需要が分散化してしまっている。

たとえば、カローラにハイブリッド車が設定されたことが、プリウスから営業車としてのニーズを一部食ったという指摘もあります。

2.競合環境の変化

エコカーの選択肢がプリウス以外にも広がった点も逆風の一因です。

3代目デビュー時点ではホンダのハイブリッド車「インサイト」が唯一無二の競合車種でしたが、最近では「SKYACTIV-D」で知られるクリーンディーゼルエンジンを搭載するマツダ車がクローズアップされています。

ディーゼルエンジンはパワフルな特性ながら価格の安い軽油を燃料に使い、燃費性能も高い。

ご存じのように、かつては大気汚染の原因の1つと厳しく批判された時期がありましたが、欧州を中心に海外ではさまざまな技術改良によって厳しい排ガス規制をクリアできるディーゼルエンジンがあり、マツダもその1つとして、実用性以上に好意的に見ている消費者も少なくないと思われます。

3.新エコ技術の台頭と差別化

次に三菱自動車のプラグインハイブリッド車仕様である「アウトランダーPHEV」のような新世代エコカーも出てきました。

プラグインハイブリッド車とは、家庭用電源コンセントなど外部からプラグを介して直接バッテリーを充電できるようにしたハイブリッド車のことで、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)のいいトコどりをしたエコカーです。

1回の充電での航続距離も長くなり、インフラの整備が進めば、主流になりそうです。また、災害時には車自体がバッテリーとして機能して、家の電気を賄えるのも利点の1つです。

また、日産の最量販車種となったノートにも、「e-Power」と呼ばれるパワーユニットを搭載したエコカーのCMは興味を引きます。

エンジンとモーターを併用する点ではプリウスと同じハイブリッド車ではあるものの、エンジンが発電機を回すことに徹しているのが特徴です。

プリウスはその先進さから、「新しいメカ好き」「エコファッション」層に受け入れられてきました。

しかし、登場から20年が経ち基本システムが抜本的に変わっていない状態では、けっして最先端とも言えなくなってきているとの声もあります。

その声を受けてプリウスにもアウトランダーPHEVと同じくプラグインハイブリッド車仕様の「プリウスPHV」が昨年2月に追加されましたが、月間販売目標は2500台で設定されており、プリウスシリーズ全体を大きく押し上げるほどのインパクトになっていないとみられます。

4.走る楽しみへの不満感

1部のユーザーの声では、プリウスをはじめ、トヨタのハイブリッド車は燃費にこだわるあまり、クルマがドライバーの運転にかなり「介入」してくる感じがあると指摘しています。

たとえば、なるべくエンジン回転数をあげないようにクルマが抑制するような動きです。

燃費にこだわるオーナーならば問題ないが、「走りを楽しみたい」など、クルマ本来の性能にも期待を寄せる人には物足りないのも確かなのではないでしょうか。

これらの点が他社の新しいエコカーに目を向けるユーザーが増えている一因と指摘があります。

5.個性的すぎるデザイン

4代目は3代目以前のプリウスをはじめ、トヨタ車からの乗り換えが進まないという指摘もあります。

何台にもわたってトヨタ車を乗り継いでもらえるという「代替え販売」がトヨタの強みでしたが、4代目のデザインと言われています。

ある意味で個性的、ある意味ではアクが強いともいえ、万人受けはしにくいようです。

北米で先行販売した4代目ですが、アメリカの市場を意識しすぎたデザインとの指摘もあります。

そうはいっても、おそらく今後も月販1万台前後の販売は続けていくと予想があり、ビッグネームであることには変わりがないようです。

 

かつて低迷したトヨタを救ったプリウスにはトヨタ関係者のみならず業界関係者の思い入れもひとしおだと思います。

世界のトヨタであり続けるための苦悩もあると思いますが、日本の誇りとなり将来への資産となる車の開発に期待したいと思います。

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