最近、特に高齢者運転に関する話題を目にする機会が増えました。

平均寿命が延びに伴い、運転者の高齢化が進んでいます。

動車開発も幾つかのカテゴリーに集約されます。

化石燃料からの脱却と経済性を中心にした車両

衝突安全性や運転サポートに重点をおいた開発

スープラの開発に見られるようなパワーユニットの開発

などではないでしょうか?

その中でもボルボの「2020年までに新型ボルボ車での死亡事故0宣言」は印象に残ります。

以前よりボルボはユニークなイメージ戦略がありましたし、そのイメージは今も生きていると感じます。

「スエーデンスチール(堅牢さ)」「重い」「エンジンが強い」「角張った車体やインパネのデザイン」など、独自の戦略で歴史を築いてきました。

中でも象徴的な例が3点式シートベルトです。

3点式シートベルトをボルボは、今から60年前の1959年に初めて導入しました。

今ではクルマにとって当たり前の装備となっている3点式シートベルト。

ボルボはこれを世界で初めて導入しただけではなく、その安全に対する寄与の大きさから何と特許を無償開放することで、世界への普及を後押ししたことは有名な話です。そ

の結果として世界中の自動車メーカーが採用し、“自動車の安全性に関する歴史上で最も重要といわれた発明”は、これまで100万人以上の命を救ったと言われています。

最近では安全性に磨きをかけて、独自の運転サポートシステムを開発してきました。

古いファンの中には衝突安全性のために高くなったボンネットデザインや丸みを帯びて洗練されたデザインに違和感をおぼえる方もいらっしゃる事と思います。

話を戻しますが、ボルボは2007年に「Vision 2020」なる宣言を行いました。

2020年までに新しいボルボ車に搭乗中の事故による死亡者、そして重傷者をゼロにするという内容です。

1970年に発足したこのチームは、ボルボ本社があるスウェーデン・イエテボリから100kmの範囲で発生したボルボ車が絡む事故の現場へ直接出向き、詳細な調査、分析を行い続けています。

その数は、すでに4万件以上になると言われています。

警察や医療機関、保険会社とも連携して、机上ではなく実際のデータに基づいた独自の安全開発を続けてきました。

このプロセスを経て、ボルボは「Vision 2020」の達成のため、さまざまな策を講じてきました。

際に衝突が起きた際に乗員を守るためのパッシブセーフティ技術が、車体の衝撃吸収構造やエアバッグ、シートベルトなどの進化によりさらに磨き上げられているのはもちろん、近年は衝突を未然に回避する、もしくは衝突が避けられないときでも事前の対処により被害を可能な限り低減するための、アクティブ・セーフティ技術の飛躍的な向上を実現させています。

そんな中、試金石となったのが、2009年に日本に初導入された“City Safety(シティセーフティ)”です。

衝突回避のために車両を完全停止まで導く衝突回避・被害軽減ブレーキを、日本で初めて設定したのは実はボルボと言われています。

これは、国内メーカーが技術的には実現できていながら、完全停止の実現には二の足を踏む状況の中で、海外での事故統計などをもとに地道に国交省と折衝を繰り返した結果。現在の衝突回避・被害軽減ブレーキの普及ぶりを見るに、これが英断だったといえます。

最新のボルボ車が標準装備している先進安全・運転支援機能の「IntelliSafe (インテリセーフ)」は、衝突回避・被害軽減ブレーキシステム付きシティセーフティをはじめ、ステアリングアシスト付きBLIS(後車衝突回避支援機能付きブラインドスポット・インフォメーション・システム)、衝突回避・被害軽減ブレーキ機能付きCTA (クロス・トラフィック・アラート)、被追突時警告機能(静止時ブレーキ維持機能付き)などのさまざまな機能により構成されています。

これによって、いわば車体の周囲360°の監視と、衝突回避・被害低減を追い求めています。

様々な要因からなる「死亡事故0宣言」達成は困難に思えますが、ボルボは、目標を変えることはしないと思われます。

ボルボにとって安全は永遠の課題であり、今後もその哲学をブレさせることなく、それを追求していく姿勢は日本人の琴線に触れる姿勢ともいえます。

また安全性向上の一環として立ち上げられたのが「E.V.A.プロジェクト」。

これは、ボルボが独自の事故調査や、その他の研究、調査によって蓄積してきた安全に関する知識が集約されたデジタルライブラリーを初公開し、誰でも容易に利用できるようにするというものです。

この「誰でも」にはほかの自動車メーカー、サプライヤーなども含まれ、むしろ「利用を推奨したい」という姿勢は昨今トヨタがハイブリット技術の公開に踏み切った姿勢と重なります。

E.V.A.とは“Equal Vehicle for All”の略です。

ボルボはこの安全に関する知見を共有することで、自動車全体の安全性の底上げにつなげようと考えています。

3点式シートベルトがそうだったように、結局はそれが自動車業界全体の発展につながり、自社の利益としても返ってくることをよく理解しています。

自社の優位性のみを追及するのでなく、業界全体で共有する姿勢には強い共感を覚えます。

さらにボルボはこの3月に、E.V.A.プロジェクトの立ち上げに先んじて、2020年以降、つまり2021年モデルからのすべてのボルボ車に180km/hまでの速度制限を導入する、もう1つ衝撃的な発表を行いました。

ボルボ・カーズのホーカン・サムエルソン社長兼CEOは「速度を制限することですべてを解決できるわけではありませんが、たとえ1つの命でも救うことができれば、それは価値があるといえます」というコメントを出しています。

アクティブ・パッシブ両面でどれだけセーフティ技術を磨いても、高すぎる速度域では、十分に対処するのは難しい。

もちろん各国に速度制限は設けられていますが、それでも依然としてスピードの出しすぎは重大事故の大きな原因となっています。

一例として、アメリカのNHTSA(運輸省高速道路交通安全局)によれば、アメリカの全交通死亡事故数の25%が速度超過によるものです。

この180kmの速度制限は、ボルボにとって4~5番目という大市場であるドイツ向けにも適用されます。

アウトバーンを有し、いまだ速度無制限区間も多いドイツでの販売に、影響が出る可能性もあります。

しかし、今の世の中の風潮からすれば、これは正しい方向性といえます。

また同じく2021年モデルから、最高速を任意で設定可能なケアキーの導入も発表しています。

これは車両を家族や子どもに貸し出すとき、さらにはカーシェアリングに提供するときなどに役立ちます。

さらに2020年代初頭に発売される次期型プラットフォーム採用モデルからは、ドライバーモニタリングカメラも搭載するそうです。

運転中の携帯電話の使用などによる注意散漫、そして飲酒や薬物の使用などによる酩酊状態を認識すると、まずは警告を発し、反応がなければ車両が運転に介入。

減速、アシスタンス・サービスへの通報、さらには自動的に停車させるディバイスです。

これらのように様々なデーターに基づいた安全装備の独自の開発姿勢や情報共有の姿勢は「安全の価値が下がる事はない」という頑なな企業姿勢を貫くボルボ独自の思想と言えます。

これからも、安全性に対するひたむきな企業姿勢を応援して行きたいと思います。

facebook
twitter
facebook