本年7月18日に投稿したブログに各自動車メーカーがディーラーにインセンティブをえさに過剰在庫を持たせ、それが新古車と言う名のもとに市場に多く出回っている仕組みをお話しました。
インセンティブ(報奨金制度)は車業界だけでなく、販売施策の1つとして様々な業界で使用されています。
その中でBMWが飛びぬけてネット販売サイトでの新古車掲載台数が多いと指摘しました。
今回、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いでBMWの調査に動き出しました。
BMWと言えば、スポーティーな高級車として憧れのブランドです。
低成長化の日本経済にあって、自社ブランドのシェア争いは厳しさを増しています。
各社・各ブランドとも安全性能・環境性能を強化して付加価値を高める製品戦略を展開しています。
シェア拡大には製品開発力・マーケティング施策・営業力がバランスよく作用し合う事が基本ですが、BMWなどの多くのグローバル企業の場合は数字目標必達のために押し込み営業が散見させます。
新古車と言う概念は需給バランスの不均衡が生んだのです。
新古車を作ると、1台単位で見れば収益は悪化します。
しかし、台数ノルマを達成したときにメーカーから支払われる成功報酬(リベート)があるため、多少の自社登録やむなしというのは、BMWに限らず自動車ディーラーの間では共通の考え方になり慣習化しています。
ただ、あまりにも多くの新古車を抱えることは、ディーラーの経営を圧迫することになります。
また近年、自動ブレーキや運転支援システムの搭載など自動車の高度化が進んだことにより、不具合対応やメンテナンスでメカニックの労働時間は長くなっており、BMWディーラーは大量の新古車を抱えるために経営が厳しく、ほかのメーカーのディーラーとのメカニック獲得競争で不利な立場に立たされているとも言われています。
実際、ディーラーには販売台数達成に強い圧力がかかっており、契約打ち切りをめぐって訴訟が起きるなど、軋轢も表面化しています。
BMWでディーラーによる自社登録が増え始めたのは2013年頃。
このころ、ライバルのメルセデス・ベンツが販売台数を伸ばし、BMWに対して差をつけ始めた時期と符合します。
これらの原因は販売台数をかさ上げするためにBMWの日本法人、ビー・エム・ダブリュー株式会社(BMWジャパン)がディーラーに大量の自社登録をさせていると言われています。
関係者によると、2018年の新車販売台数約5万台のうち、3割はこうしたディーラーによる自社登録によるものだそうです。
本来新車で買う予定だった顧客が新古車で購入することがあるため、実際の販売力は正確には見積もれないが、5万台という数字が“少なからず”「かさ上げされた数字」とみることはできそうです。
新古車や自社登録の存在は、少し自動車に詳しい人間の中では広く知られています。
安い新古車が出回るということは、それを狙って購入するユーザーにとって必ずしも悪い話ではありません。
ただ、需給バランスの不均衡による価格の凋落により中古車市場全体でのブランドの価値が下がってしまう可能性があります。
つまり、既存のユーザーにとっても下取り価格が下がるなどの弊害が及ぶと考えられます。
ディーラーは冷え込んでいる消費マインドを理解しており、顧客や消費者に対するサービスの質の向上に努力をしています。
長期化する不況経済下におけるブランド戦略を見据えた時に、押し込み営業は結果としてブランド価値の低下を招き、中古市場価格の低下を招きます。ディーラーの喘ぎを聞き入れて、更に強固なBMWブランドの構築に期待したいと思います。