最近TVで「トヨタイムズ」のCMが目につきます。なぜ自動車会社が街作り?と思う方も多いと思います。
そこで今回は自動車会社であるトヨタがなぜ街づくりを目指したのかをお話ししたいと思います。
CMの中で豊田章男社長がCES2020で「コネクテッド・シティプロジェクト」をプレゼンテーションしています。
自動車メーカーであるトヨタがどのような将来像を描いているのかとても興味がわきます。
「Toyota Motor North America」から出された2019年12月19日付プレスリリースでは、トヨタはCES2020のプレスカンファレンスで新しいモビリティエコシステム戦略について記者発表をする、展示ブースでは「eパレット」などモビリティ・プロダクトとともにトヨタのエコシステム計画を紹介するとされていました。
こうしてトヨタへの注目が高まるなか、1月6日に行われたCES2020のプレスカンファレンスで発表されたのが、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクトです。
その内容は参画パートナーとの連携を通して、人々が実際に生活をするリアルな環境のもとで自動運転、CASE、MaaS、ロボット、スマートホーム等などを導入・検証する実証都市を建設する・・・
それが「コネクティッド・シティ」プロジェクトです。
「CMではあくまでも人間が中心のスマートシティ」と氏は語っていますが、AIを核とした生活環境の変化は利便性の向上と人間の心理や行動にどのような変化をもたらすのか、興味があるところです。
この実証都市は、静岡県裾野市。2020年末に閉鎖予定の東富士工場の跡地が利用されることになっています。
着工は来年初頭、将来的には約70万平方メートル、東京ドーム約15,000個の広さとなるようです。
事前プレスリリースで「エコシステム」と述べられていた通り、トヨタは、世界中の企業や研究者に対してプロジェクトへの参画を呼び掛けています。
その目的は、人々のくらしを支えるあらゆるモノ、サービスが情報でつながる時代を見据えながら、テクノロジーやサービスの開発・実証のサイクルを高速で回すことによって、新しい価値やビジネスモデルを生み出し続けること。
参画する企業や研究者は、実際の街づくりが進められるなか、独自プロジェクトの実証実験も行うことができます。
トヨタは、網の目のように道が織り込まれ合う街の姿をモチーフに、この実証都市を『Woven City』(ウーブン・シティ)と命名しました。
Wovenとは「編まれた」を意味します。
イメージとしては、
環境との調和やサステナビリティが前提とされた街。
住民はロボット、センサー、AIなどの先端技術を通して、より健康的で良質な生活を送る。
道路は、スピードが速い車両専用道ないし「eパレット」など完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道路、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道路、そして歩行者専用の公園内歩道のような道路といった3つに分類。
「eパレット」は人の輸送やモノの配達に加えて移動店舗としても利用される。
街の中心や各ブロックには公園・広場を作り、住民同士がつながり合うことでコミュニティが形成される。
これらが、トヨタが打ち出した『Woven City』の姿です。
豊田社長は、プレスカンファレンスの結びに「『Mobility for All』に取り組む会社として、世の中をよりよくしていくために役割を果たさなければならないと考えている」「これは決して軽くはない責任と約束である。
そして、この『Woven City』は、その約束を果たすうえで依然小さなものであるが、重要な一歩となる」と述べ『Woven City』の背景には、豊田社長自身が数年前から抱き、直接言葉にもしてきた「自動車業界は100年に一度の大改革の時代」「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」といった強烈な危機感が存在すると考えています。
自動車産業を取り巻く具体的な環境変化を挙げてみますと、
- 自動車産業の構造・需給関係が変化し、業界全体の規模や販売台数が減少する恐れがある
- 業界内外の競争で厳しい展開となり、自社のマーケットシェアが減少する恐れがある
- 次世代自動車産業における競争のカギが、ハードからOSやサービスなどに変化し、テ クノロジー企業などに覇権を握られる可能性がある
- 既存の自動車メーカーはハードの納入会社と化してしまう可能性がある
- 中国や欧州のEVシフトが急速化している
- 中国が推し進める新エネルギー車の対象からハイブリッド車を除外するなど、トヨタ狙いの動きが明らかである
- EV化や自動運転化での短期間での収益化・量産化が読めない
- CASEでの対応が最先端プレイヤーと比較すると出遅れている可能性がある
- ライドシェアなど日本国内では規制で手が打てない分野は状況が見えにくく、会社全体として必要なレベルにまで危機感が高まらない
- 次世代自動車産業においては巨大なトヨタや関連企業、関連産業の雇用を維持するのが困難となる可能性がある
など、車産業のグローバル競合が激化し、ITテクノロジーの台頭による質的変化は自動車業界にも大きな影響をもたらしています。
これらを背景に提唱された『Woven City』は、次の二つの点からも非常に高く評価されています。
第一に、「コネクティッド・シティ」、エコシステムという極めて「大胆なビジョン」を提示したことです。
くわえて、着工が2021年初頭というスピード感があります。従来の日本企業であれば、少なくとも3年、あるいは5年・10年というスパンでの計画となるのではないでしょうか。豊田社長の危機感から来る相当なスピード感といえます。
第二に、「コネクティッド・シティ」の拡張性です。
「コネクティッド・シティ」プロジェクトは、現時点では静岡県裾野市の『Woven City』建設までの発表となっています。
しかし、法制度などハードルがクリアになれば、富士山のふもとを起点にしつつ日本全国、さらにはグローバルに「コネクティッド」化、スマートシティを推進するというトヨタの使命感も伝わってきます。
次世代自動車産業は「クルマ×IT×電機・電子」が融合する巨大な産業です。
そこにはクリーンエネルギーのエコシステムとして電力・エネルギーが加わります。
半導体消費が大きいことに加え通信消費が大きいのも次世代自動車の特徴。
クルマがIoT機器の一部になる近未来には、通信量は膨大なものになるはずです。
これらが交差してくると「東京電力のような電力会社やNTTドコモのような通信会社がクルマを売る」「トヨタのような自動車会社が電力や通信を提供する」などといったことも現実になってくるかもしれません。
事業の大小を問わず、明確なビジョンを提示することは、自らの事業を通じて「どのような社会的課題と対峙するのか」「どのような新たな価値を社会へ提供するのか」という観点から事業を構築していくということでもあります。
つまり、社内向けのお題目やきれいごとを提唱するのでなく、社会に対してコミットして、社会にとって必要とされるビジネスモデルやサービスを提案していく事が会社存続に必要なことだといえます。
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