「妖精さん」・・・耳慣れない言葉ですが、役職を解かれた定年間近の社員のことを表現する揶揄です。
本ブログの2020年1月23日に投稿していますので、ご興味のある方はご一読ください。
なぜ「妖精さん」と呼ばれるのか?それは「朝の数時間しか姿を確認できない珍しい存在」だからだそうです。
年代別労働者人口ピラミッドが変化する前は日本企業の多くは年功序列でした。
役職者は惜しまれつつ、尊敬されつつ勇退するのがサラリーマンの理想像でした。
しかし年代別労働者人口のピラミッドが変化し、定年延長が立法化され、労働者の流動化が進む中、役職を失った長老は「妖精さん」になってしまいました。
日本を代表する某大手メーカー。その関東地方にある拠点に「妖精さん」は“生息”していました。
早朝の社員食堂に現われ、午前9時には姿を消してしまうといいます。
生息の実態はどうなっているのか。そもそも、なぜ「妖精さん」なのか。“目撃者”の証言からたどってみましょう。
・フレックスタイムをフル活用して、朝7時前には出社する
・タイムカードを切って社員食堂に移動
・コンビニで買った朝ごはんを食べたり、スポーツ新聞を読んだりして、1~2時間ほどゆったり過ごす
・他の社員が出社する9時が近づくと、静かに自席に戻っていく
つまり、朝の数時間しか姿を見ることができないことから「妖精さん」と名づけられたのです。
そう、「妖精さん」の正体は、このメーカーに勤める「50代後半の働かないおじさん」でした。
では自席へ戻った「妖精さん」は日中、何をしているのでしょうか。
・職位は管理職の一歩手前で、「エア残業」している
・パソコン操作は、人さし指だけの「一本指打法」
・上司も積極的に仕事を振らないため、パソコンの前で「フリーズ」
こんな調子です。
かつて、こうした「働かないおじさん」たちは、「給料泥棒」とか「ごくつぶし」「無駄飯食い」と呼ばれていました。
「妖精さん」は、かわいらしいネーミングとは裏腹に、やはり社内で疎まれる存在のようです。
そして、その存在が“副作用”をもたらします。「妖精さん」に嫌気がさして退職する若手社員が続出するようになったのです。
「妖精さん」に代表される大企業の「働かないおじさん」問題は、今に始まったことではありません。簡単に歴史を振り返ってみましょう。
「働かないおじさん」が生まれた経緯と日本経済
【1960年代】高度経済成長期
新卒一括採用、年功型賃金、終身雇用を特徴とする「日本型雇用」が大企業に根付きます。
若い社員は、雇用の安定と将来の昇給を信じて給料が安くてもがむしゃらに働き、急成長する会社にとっては、大量の労働力を低コストで確保できます。
「日本型雇用」は労使双方に都合のよい仕組みでした。
【1970年代】高度成長から安定成長へ
1973年のオイルショックを機に成長ペースが鈍ると、年功で高給を得るようになった中高年の社員に、会社は見合ったポストを用意できなくなります。そして生まれたのが「窓際族」です。
会社にいてもろくな仕事がない中高年の呼び名で、オフィスの奥のほうの窓際にしか居場所がないことを表します。
【1980年代】バブル経済
それでも「大企業は雇用を守る」が社会の常識で、「窓際族」は会社を追われませんでした。
80年代後半からのバブル期では、仕事がなくなった中高年社員が出ても、会社は彼らをグループ企業に出向させて、雇用を守りました。
【1990年代】バブル崩壊
しかし、1991年のバブル崩壊で状況が一変します。
会社を守るには、コストを抑えるために「余剰人員」の削減もやむをえない──そんな価値観が、産業界で一気に広まります。
1998年にゲーム大手のセガ・エンタープライゼスにできた「パソナルーム」は有名です。配置先が見つからない社員が、隔離された小部屋に集められ、ただ座って過ごすだけで具体的な仕事はなかったとされます。
社員の間では「独房」「座敷牢」と呼ばれました。
【2000年代】進むIT化と不況
技術のIT化が中高年の「余剰人員」化に拍車をかけます。若い頃に身につけたスキルが、どんどん役に立たなくなるからです。
また2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災後の円高不況を経ると、“人減らし”の手法はさらに巧妙になりました。
2012年にパナソニックグループにできた「事業・人材強化センター」、通称「追い出し部屋」が代表例だと言われています。
希望退職を拒んだ社員らが配属され、おもに多忙な他部署への応援を命じられました。
なぜ、働く人を家族や仲間と見ない、冷たい雇用システムがこれほどまでに広がったのでしょうか。
それは再就職支援を掲げる人材サービス会社が、ウラで動いていたからです。
人材サービス会社は、「余剰人員」向けに社外の働き口を探すだけでなく、中高年に社外での活躍を呼びかける研修も請け負いました。
2019年に上場企業が募った希望退職者の合計は、6年ぶりに1万人を超えました(東京商工リサーチによる)。
将来を見据えて好業績のうちに人減らしをする「黒字リストラ」も目立っています。
「窓際族」の出現から40年あまり。
今や「妖精さん」とも呼ばれるようになった「働かないおじさん」たちは、かつてないほど厳しい状況に置かれているのです。
それでも、自ら退職しない限りは、「妖精さん」には安定した収入が保障されています。
会社内で居場所を失っているとはいえ、雇用は守られています。一方、若い世代はどうでしょうか。
バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代前半、業績が低迷した企業は、新卒者の採用を極端に絞り込みました。
この戦後最悪の「就職氷河期」と、学校を卒業して社会に出るタイミングが重なったのが、1970年前半から80年代前半にかけて生まれた人たちです。彼らは「氷河期世代」もしくは「ロストジェネレーション」(ロスジェネ)と呼ばれます。
「ロスジェネ」は2000万人規模とも言われ、現在30代後半から40代。
希望の職に就けず、不安定雇用にとどまり、低賃金にあえぎ、親と同居し、家族を持てず、将来展望に不安を抱いている人が少なくありません。
企業が新卒採用を絞り込むと同時に、政府は規制緩和として派遣労働を多くの業種で解禁しました。
したがって、この時期に就職活動をした「ロスジェネ」たちは非正規雇用に多く就き、雇用も収入も社会的地位も不安定なまま過ごすことになります。
このように「ロスジェネ」が苦しむ最大の原因は、前述した「日本型雇用」(新卒一括採用、年功型賃金、終身雇用)にあります。
右肩上がりの時代には一定の効用があった「日本型雇用」というシステムですが、バブル崩壊後の長期不況で矛盾を露わにしました。
年長世代の雇用を守ろうとする企業は新規採用を絞り込み、その後に景気回復しても、新卒の採用が優先され、「ロスジェネ」は見捨てられたままです。
「妖精さん」を守るために正社員から弾き出されたのが「ロスジェネ」たちであり、「ロスジェネ」は「妖精さん」と対極に位置する存在と言えるでしょう。
非正規雇用は今、雇われて働く人の4割弱を占め、その多くが独身女性です。
『老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代』という著書には、
「ロスジェネ」たちも、あと20年ほどで高齢者の仲間入りをします。
まさにこのとき、日本では65歳以上の人口がピークを迎えます。
2042年、高齢者の数は3935万人にまで膨れ上がると予測されているのです(国立社会保障・人口問題研究所の推計による)。
つまり「ロスジェネ」は、「老後レス社会」の「主役」にほかなりません。
若い頃は安い給料で働かされ、今は会社に居場所がない「妖精さん」。
その「妖精さん」を「高い給料をもらっているのに、働かない」と批判する「ロスジェネ」たち。
こう見ると「妖精さん」たちにとっても「ロスジェネ」世代にとっても労働環境の変化とゆがみが生んだ犠牲者と言えるかもしれません。
長い間の歴史と変化によって、このような労働環境の変化がもたらされていますが、今を憂い、将来を案じるのであれば、新たな可能性を求めて一歩踏み出すことをお勧めします。個人事業で0から始めて、「売上3年・利益5年」を忍ぶより、初めから売り上げと利益が生まれる可能性が高く投資金額が小さなビジネスに参加するのもオプションの1つだと思います。
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