今までのコラムでもお話してきましたが、副業や個人事業をスタートするためには多くのクリアーしなければならないハードルがあります。
給与所得者で現在の仕事の延長上の副業であっても基本的には必要とされる要素は同様です。
①知識やアイデアを商品にする場合も特定のカテゴリーの商品を扱う場合でも安定したソーシング(調達ルート)の確保が必要です。
②季節によって変動する相場をしっかりと把握する必要があります。
③自分の扱うサービスや商品がいつなら安く仕入れられ、いつなら相場が高めに振れるのか?
④中期計画や年度の計画立案に際し、取り扱うサービスや商品の需要期はいつなのか?
逆に閑散期はいつなのかを把握する必要があります。
以前から2月8月は消費が弱いと言われていますが、新入学や固定資産税・自動車税で支払いがかさむ5月なども支出を渋る傾向が強い時期です。
⑤似たようなビジネスモデルを運営している先発組の強み・弱み・料金体系などを分析して差別化を図る施策を講じる事も必要です。
⑥実際に仕入れを行う前に考えなければならないのは、このサービスや商品のターゲット層です。
そのターゲットが望むプライシング・付加価値・プロモーションを提供しなければなりません。
⑦事業を始めるわけですから。マーケティング・営業・経理の知識を習得する必要があります。
特に経理に関してましては経験がない場合が多いため、いざ確定申告の時期になると慌てて帳簿整理や収支報告書作成などに着手するケースが多いと思います。
確定申告には青色と白色申告があり、自身の事業の場合、どちらが便利なのかもわからないケースもあります。
そこで今回はそんなお悩みにお答えしたいと思います。
国や税務署は、青色申告を薦めています。
税金入門書のほとんども、青色申告を薦めています。
だから、個人事業者の中には、何の疑問も持たずに青色申告を選択している人も多いようです。
しかし、小規模事業者は、青色申告よりも白色申告のほうが有利だといえます。
なぜなら青色申告というのは、「きちんと帳簿をつける見返りとして、若干の税金割引をします」という制度だからです。
この「きちんと帳簿をつけること」というのが、経理初心者の人には非常に大変なことです。
例えば、複式簿記とはどういう意味を一瞬で理解できるでしょうか?
会計の勉強をしたことがない人はわからないと思います。
青色申告の場合、原則としてこの複式簿記をしなければなりません。
普通の人が、経理としてイメージしているのは、売り上げから経費を差し引いて利益を算出するというものです。
小遣い帳とだいたい同じ要領です。
しかし、この帳簿は複式簿記ではなく単式簿記といわれる形式です。
複式簿記というのは、単式簿記に加えて、資産の増減を取引ごとに記帳し、最終的な資産残高を算出する方法です。
そして、資産の増減と利益額がぴたりと一致するようにしなければなりません。
もし、これを読んで何がなんだかさっぱりわからない、と思ったのなら、青色申告はやめたほうが賢明です。
白色申告ならば、とりあえずそんな面倒な帳簿は不要です。
そして、白色申告の場合、帳簿が不備であっても、ペナルティーがあまり無いというのも大きなメリットです。
次に青色申告と白色申告の具体的な特徴を簡単に説明しましょう。
青色申告というのは、一定の要件を満たした納税者が、自分で「青色申告を選択します」という届出を出して、税務署からそれが認められた場合に可能となる申告方法です。
白色申告とは、青色申告の届出をしていない人の申告方法です。
本当は白色申告という呼び名はないのですが、申告書が白なのでそう呼ばれています。
青色申告の主なメリットは、次のとおり。
①65万円の所得控除が受けられること(電子帳簿の作成もしくは電子申告をしていない場合は55万円。簡易記帳の場合は10万円)
②家族を従業員にした場合、その給料が普通に払えること(白色の場合は86万円まで)
③事業の赤字を3年間繰越できること
ではこのメリットを順に説明していきます。
①の所得控除の65万円というのは、単純に所得から65万円を差し引けると言うことです。
しかしそれほど魅力的なものではありません。
税率10%の人ならば、節税額は6万5000円であり、住民税と合わせても10万円程度です。
青色申告の場合、経理に大きな負担がかかり、場合によっては税理士に頼まなくてはならないので、10万円の節税では元が取れない場合もあります。
②の家族に給料が払えることはけっこう魅力があります。
家族に給料を払って収入を分散すれば、税金は大きく軽減できるからです。
③の事業の赤字を3年間繰り越せるというのも、それなりに魅力です。
以前に大きな赤字があれば、それを繰り越すことで税金を大幅に減らすことができます。
青色申告のメリットは、この2つに絞られるといえます。
では次に青色申告のデメリットをお伝えします。
①記帳が大変であること
②税法の制約が厳しくなること
以上の2点が青色申告の大きなデメリットです。
①記帳の大変さについては、青色申告は原則として複式簿記を行い、関係帳簿をほぼ完全に整備しておかなければなりません。
これは、会計初心者にとっては、かなり大きな負担です。
税務署や青色申告会(税務署が肝いりで作った会計指導団体)などでは、記帳の指導も行っていますが、複式簿記を素人が自分だけで作るのは事実上無理であり、税理士に頼む必要が生じると思います。
青色申告の制度には、簡易な記帳の方法も認められているが、これもそれなりに難しい。
そして簡易な記帳では、所得控除の特典が65万円ではなく、10万円になってしまうため、税率が10%の人ならば、たった1万円の節税にしかならないのです。
青色申告で簡易の記帳を選択するくらいならば、正式の青色申告にしたほうがメリットがあります。
また②の税法の制約が厳しくなることについてですが、これはどういうことかというと、青色申告の場合は、きちんと帳簿をつけているというのが原則なので、ちょっとした誤りでも、不正計算とみなされ、重加算税の対象となりやすくなるということです。
白色申告ならば、「うっかり忘れていました」という言い訳が可能だが、青色申告の場合は、そういう言い訳ができず、故意に税金を逃れたとして重加算税などをかけられる可能性が高くなります。
このように青色申告はいいことばかりではないことがお分かりだと思います。
白色申告の最大のメリットは、なんといっても記帳や経理の負担がそれほど大きくないということです。
白色申告にも記帳の義務はありますが、売り上げや経費に関するものだけであり、小遣い帳をつける程度のレベルで可能です。
青色申告の複式簿記と比べれば段違いに負担は小さい。
また電子帳簿作成などの義務もありません。
これは事業を始めたばかりの人や小規模事業者にとっては非常に利点です。
小規模事業者にとって、記帳や税金の計算にまではなかなか手が回らないからです。
白色申告のデメリットは、赤字の繰り越しができないこと、家族への給料支払いが限られていることなどです。
白色申告でも、家族従業員への給料は一定額認められています(妻の場合は86万円まで、妻以外の家族では50万円まで。ただし家族への給料は、事業所得の半分以下とすること)。
ただ家族への給料を規定以上に支払った場合、経費として認められない代わりに、もらった家族には事実上税金がかかってきません。
だからどんぶり勘定でやっている家族事業者などは、白色申告のほうが有利になっているケースが多いようです。
このように白色申告は、青色申告に比べて決して不利だとは言えないのです。
次に青色申告を選択する要件として、次の3点を挙げられます。
①記帳や経理について、しっかりできるというメドがついており、細かい節税策を講じる用意がある
②多額の所得が見込まれ、家族にたくさんの給料を払いたい
③赤字が見込まれる年が頻繁にある
この3点のうち、1つでも該当するものがあれば、青色申告は有利であり、そうでなければしばらくは白色申告をお勧めします。
事業開始して、事業規模が1000万未満の場合は、しばらくは白色申告がお勧めです。
しかし、事業規模がどんどん大きくなっていくと、いつまでも白色申告では不利になることもあります。
事業が拡大して、売り上げが増えれば、白色申告といえども記帳をきちんとしなければならなくなります。
つまり、白色申告の最大のメリットである「テキトー」ができにくくなります。
どうせ記帳をきちんとしなければならないのなら、いっそ青色申告にしてしまったほうがいいという意見もあります。
また、個人事業の青色申告を通り越して、会社組織にするという手もあります。
感覚的には、青色申告にするくらいなら会社組織にしたほうが節税の幅が広がる分、有利だといえます。
なにはともあれ、白色申告をやめるメドは、だいたい売り上げが1000万円を超えるとき、と考えればいいと思います。
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