中古車販売をしていますと、現車確認のご依頼を頂戴します。

中古車を出品する側としては是非ともお買い求めいただきたいので、せっせと中古車を清掃してお出迎えします。

一方のお客様の気持ちとしては、中古車のコンディションを確認すると共に、出品者の人柄などを確認したいというお気持ちでお越しいただきます。

加えて、コミュニケーションを図り、中古車の値引きが出来ればという心理も働きます。

今回は「値引き」を心理学的に深堀していきたいと考えています。

まず、皆さんは百貨店や高級ブランドブティックで値引き交渉をした経験があるでしょうか?

公共交通機関を利用する際や高級レストランや寿司店・海外のリゾートホテルで値引き交渉をしたことがあるでしょうか?

大多数の方は「ない」とお答えになると思います。

では、皆さんが値引交渉した経験のある商材やサービスは何でしょう?

  • 不動産取得時の物件価格や手数料
  • 家電量販でエアコンや大ビジョンTVの価格
  • 新車購入時
  • 中古車購入時

などが主な値引き交渉対象業種・商品ではないでしょうか?

理由として考えられますのは、

  • 高額商材である
  • 利幅が大きいはずだと思っている
  • 不明瞭な手数料は払いたくない
  • メンテナンス費用・維持費が将来掛かるので手元資金を残しておきたい
  • 大きな支出で家計への影響を与えたくない
  • とりあえずゲーム感覚で切り出してみよう
  • 習慣化している

などではないかと思います。

また、歴史的に考察すると「3種の神器」=家・テレビ・自動車(新車・中古車)の保有が豊かな生活の基準であったため、その時代の販売方法や値引きの実態が残像として残っているとも考えられます。

上記値引き交渉したくなる4カテゴリーのうち、不動産や中古車は市場の相場に密着して価格が決められます。

では「中古車相場」はどのような要素で構成されているのでしょうか。

中古車の場合は、車種・グレード・年式・走行距離・オークション評価(主に外装状態の評価点)・付加価値などで決まります。

季節や海外需要によっても中古車の業者購入価格は大きく変動します。

中古車販売者は様々な要因を勘案し、潮目を読んで「競り」を通じて中古車を調達し、その中古車の陸送費用・整備費用・固定費・利益を勘案して小売価格を決定します。

どの商材も調達方法は別として中古車と同じ価格構造なのです。

最近は様々な物価が値上げされ実質賃金がマイナスが続いています。

そのため、交渉できる余地があるのなら中古車に対しても交渉したいというマインドは強くなっています。

このような値引き交渉という行動を心理学的に分析しますと

ギバー、テイカー、マッチャー、スライサーなどに分類されます。

これはアダム・グラントというアメリカの心理学者が著書『GIVE & TAKE』の中で、「ギブ・アンド・テイク」の関係性をもとに、人間の考えや行動を3つに分類したものです。

見返りを気にせず他人に与える人を「ギバー」、自分の利益のために他人から何かを奪おうとする人を「テイカー」、ギバーとテイカーの中間的存在で、損得のバランスを考えて行動する人を「マッチャー」と呼んでいます。

私たちの職場や友人関係、事業においては、このような人たちが存在しています。

ギバーやマッチャーなら遭遇しても困りませんが、テイカーは、ときどき出没しては私たちを不愉快な気持ちにさせます。

巧妙なふるまいや話術で人の手柄を横取りしたり、うまい具合に自分のミスを人に押し付けたりする人だからです。

しかし、テイカーほどあからさまではないのだけれど、薄く、薄ーく、他人の時間やお金、好意(気持ち)を奪っていく人もいます。

たとえば「ほんの数分の遅刻を毎回する」「割り勘のとき絶対に“端数払うよ”と申し出ない」「食事をシェアして食べるとき、一番おいしい部分や、多くの量をしっかり確保している」「自分で調べればわかることも人に調べさせる」「自分が言いにくいことを他人に言わせる」……。

このような人と一緒にいると、だんだんモヤモヤがたまっていきます。

結果として、しだいに会うのがおっくうになり、こちらから誘う頻度が減ります。

「大きく何かを取られているわけではないけれど、あの人はちょっと……」という感じ。たまに会うのはいいけれど、長く一緒にはいたくないような人です。

このようなタイプを、テイカーではなく、ここでは「スライサー」と呼んでいます。

なぜ、スライサーはこのような行動をとってしまうのかを考えてみました。

テイカーの場合、行動は「自分の利益優先、自分が得したい」が動機です。

一方、スライサーは「得したい」というより、できるだけ「損したくない」が動機なのだと思います

本音では、自分が持っている時間、お金、気持ちは、すべて出したくない。

だから「今日は頑張って予定をつけたのだから、数分の遅刻は許してほしい」「お金を出し合って食事するなら、自分が好きなものは譲りたくない」「とりあえず役割は引き受けるけれど、ほかの人がやってくれるならお願いしたい」となるのではないでしょうか。

その行動の背景にある心理は、「だって、私、損したくない」。

こういう人いますよね?

実は、世の中には圧倒的にテイカーよりスライサーが多いはずです。

他人の時間やお金、好意を奪っていくスライサーの中でも、さらに要注意なパターンがあります。

それは、どのような場面でも、スライサー気質を発揮してしまう人。言ってみれば「全方位型のスライサー」です。

普通は、待ち合わせに遅刻されるのは嫌だけれど、食にはあまり欲がないから、相手がたくさん食べるのは気にならない、など、嫌に感じるポイントには程度の差があります。

しかし「全方位型のスライサー」は時間もお金も、気持ちも全部「損したくない」。

本人は息を吸って吐くように「損したくない」が染み付いている分、スライサーとしての“知恵”にも長けています。

自分が損しないよう、黙って譲ってくれる優しい人や、文句を言わない人を選んで付き合っています。

一方、大抵の人はスライサーの搾取に気づくと次第に距離をとります。

だから「あの人、悪い人ではないんだけれど、友達がしょっちゅう入れ替わっている」。

横で見ていてそう感じるような、深い人間関係を保てない人がいるならば、その人はひょっとするとスライサーかもしれません。

やっかいなのは、「ちょっとくらいの遅刻」「ちょっとくらいのお得」は指摘しにくいこと。

むしろ、指摘する側がセコく見えてしまう。

はっきりモヤモヤしていることを言いにくい点では、あからさまに失礼なテイカーより付き合うのが難しいかもしれません。

また、スライサーの言動は、周囲にわからないぐらい、さりげなく人の時間や好意をかすめ取っていきます。

だから、その人と距離を取ろうとする自分が「ひょっとして冷たい人間なのでは?」と罪悪感を持ってしまうことも。

とはいえ、私たちはみんな、どこかにこの「スライサー要素」を持っていると思います。

「損したくない気持ち」、これが全くないという人はいないと思います。

肝心なのは、自分がスライスされて嫌に感じるものは何なのか、自覚しておくことです。

それは時間なのか、お金なのか、気持ちなのか、です。

たとえば、割り勘で多く払うのは気にならない人でも、相手が毎回、数分遅刻してくるのはストレスに感じているかもしれません。

その逆で、相手の遅刻は気にならないけれど、お金については1円も多く出したくないと思う人もいるでしょう。

スライスされてモヤモヤするポイントは、人によって違うのです。

言い換えれば、お金のスライスが気になる人と、時間のスライスが気になる人との組み合わせなら、お互い「たいして気にならない」関係でいられると予想できます。

付き合いがおっくうになることもないはずです。

また、なぜ時間やお金をスライスされるとモヤモヤするのか、を考えてみるのもよいでしょう。

たとえば生まれ育った家庭環境が原因で、お金に対してシビアに考える癖がついているかもしれません。

それを自覚できれば、モヤモヤする相手との付き合い方をどうするか、また自分自身がどう心を整理するか、を客観的に見つめられるようになると思うのです。

このように、中古車の値引き交渉1つを取っても、歴史・環境・経済・心理が複雑に絡まってくるのです。

中古車事業を推進するにつれ、様々な局面に遭遇します。

中古車のネット販売であっても、きっかけはインターネットでも最終的には人間同士のお付き合いになります。

雑学ではありますが、このような心理分析も知識として保存しておくと多様性の時代の中古車販売に役立つかもしれません。

 

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