先日、東名高速上り線の御殿場から大井松田のカーブの多い下り坂で偶然衝突事故を目の当たりにしました。
平素からブレーキを踏みがちな状況で渋滞が多く発生する場所ですが、急な渋滞と後方からの緊急車両の追い越しが先にある事故を告知していました。
見るとミニバンと普通自動車の衝突事故でミニバンの左側が広範囲に大きくへこみ、普通自動車は大きなダメージを受けた上、シャーシ側を上に向けて横たわっていました。
最近のニュースでも衝突事故や誤発進による事故が後を絶ちません。
日本という極めて国土が狭く、信号間の距離が短く、車の走行台数が多く、渋滞が発生しやすい環境の中での安全性確保には大きな意味があります。
最近のTVCMではスバルのアイサイトを目にする機会が多くなっています。
様々なシーンで運転者は周囲を確認して安全運転をしなければなりませんが、昨年11月から登場する新型乗用車に、新たな保安基準が適用されました。
それが「衝突被害軽減ブレーキの義務化」です。
衝突被害軽減ブレーキとは、プリクラッシュセーフティブレーキやAEBSなどとも呼ばれるもので、車両や歩行者などとの衝突の可能性が検知されると、ドライバーに警報を発した後に自動でブレーキを作動させるシステムです。
メーカーによってシステムは「Toyota Safety Sense」「Honda SENSING」「アイサイト」などと名付けられています。
そうした衝突被害軽減ブレーキを義務化する道路運送車両法の改正が、昨年(2020年)1月31日に公布・施行されています。
適用は、国産車の新型車が2021年11月より、輸入車の新型車は2024年7月より、国産車の継続生産車が2025年12月(軽トラックは2027年9月)、輸入車の継続生産車が2026年7月となります。
ちなみに、ヨーロッパにおける同様の義務化は2024年7月で、日本での義務化導入は世界に先駆けたものです。
今回、義務化される衝突被害軽減ブレーキの具体的な規定は、
「静止車両に対して、時速40kmで向かっていったときに衝突しないこと」
「時速20kmで走行する車両に対して、時速60kmで走行中に衝突しないこと」
「時速5kmで道を横断する6歳児相当のダミー(身長115㎝)に時速30kmで向かっていって衝突しないこと」
というもの。
同時に、「エンジン始動のたびに、システムが再起動してスタンバイする」「緊急制動の0.8秒前に警報する」ことも求められます。
また、昨年11月からの適用では、「停止車両」「走行車両」「歩行者」が対象でしたが、この9月にさらなる改正が予定されており、そこで「自転車」も対象に加わることになります。
適用は、国産車の新型車は2024年7月、輸入車の新型車が2024年7月、国産の継続生産車が2026年7月(軽トラックが2027年9月)、輸入車の継続生産車が2026年7月です。
つまり、2021年11月の国産新型車を皮切りに、輸入車の新型車、国産の継続生産車、そして輸入車の継続生産車と続き、2026年7月までに、すべての新車が衝突被害軽減ブレーキを備えることになるわけですが、すべてが切り替わるのが5年後、という計画です。
「衝突被害軽減ブレーキの義務化」と聞くと、大ごとのように思えるかもしれませんが、実情は少々異なるようです。
実際には日本ですでに衝突被害軽減ブレーキが普及しているため、大局での影響は少ないとえます。
日本自動車工業会の発表では、2018年の時点で、新車販売のうち衝突被害軽減ブレーキ(低速度域のみも含む)装着は、84.6%に上ります。
目標は2020年までに新車装着率90%でしたが、トヨタやスバル、ダイハツはすでにクリアしており、他メーカーもほぼ達成間近になっています。
今回の「義務化」は、日本車に限って言えば、現状を追認しての“最後の一押し”だと言えます。
では、“最後の一押し”が必要だったのは何か。それは、日本車で言えばスポーツカーです。
たとえば、話題のスバル新型「BRZ」には、ATモデルにしか衝突被害軽減ブレーキ、スバルでいうところ「アイサイト」が、用意されていないのが現状です。
つまり、MTモデルには装備されていません。
「BRZ」の兄弟車であるトヨタ「86」の発売はこれからですが、こちらもMTモデルには衝突被害軽減ブレーキが採用される可能性は低いと予測されています。
理由は「BRZ」の発売は7月29日であったため、今回の「義務化」には抵触しないわけです。
しかし、トヨタの「GRスープラ」やマツダの「ロードスター」には、すでに衝突被害軽減ブレーキが装備されています。
では、衝突被害軽減ブレーキが義務化されると、どのようになるのでしょうか。
確実に言えるのは、“クルマ同士の衝突事故が減る”ということです。
衝突被害軽減ブレーキの先駆でもあるスバルが2016年に発表したリリース「アイサイト搭載車の事故件数調査結果について」を見ると、車両同士の追突事故では約8割減、対歩行者事故で約5割減、事故全体では約6割減が認められたと言います。
また、渋滞の中の運転は、集中力を維持しなくてはならず、苦痛を伴います。
実際、渋滞中の追突事故は多いことはご存知だと思います。
しかし、目の前のクルマに正対する低速の渋滞は、衝突被害軽減ブレーキにとって非常に得意なシーンなのです。
つまり、衝突被害軽減ブレーキが増えるほどに、渋滞中の追突事故は減ります。高速道路の事故渋滞も同じく減ると予想されます。
ただし、衝突被害軽減ブレーキがあれば、「もうこれでOK」というわけではありません。
ユーロNCAPをはじめとした世界の自動車アセスメントでは、試験方法をシナリオベースに進化させています。
単純にダミーブロックに真っ直ぐぶつけて安全性能を測るだけではなく、さらに進んで、「交差点を曲がるときに、曲がった先に歩行者がいた場合」といったシナリオで作られた状況での安全性能を試されます。
こうしたシナリオをベースにした新しい試験は、これまでの衝突被害軽減ブレーキのシステムではクリアできないものも多いと言われています。そのために、衝突被害軽減ブレーキは、さらなる性能向上が求められる訳です。
これからはソフトウェアのアップデートにより、歩行者や自転車だけでなく、さらに幅広い対象に作動することになると予想されます。
また、車両の周囲をさらにカバーする追加のレーダーやカメラ、ソナーなどとの連携も浸透するでしょう。
最近では、トヨタが販売済み車両を対象とした先進運転支援システムのソフトウェア・アップデートを実施するようになりました。
同様のサービスは、トヨタだけでなく、他社にも広がっていくと思います。輸入車では、ボルボがすでに導入しています。
トヨタが提供を開始したのは、昼間の歩行者検知機能を追加するアップデート。
価格は税込み取付け費別で、4,180円です。
ちなみにトヨタでは、話題のOTA(オーバー・ジ・エアー)による自動アップデートではなく、ディーラーにて丁寧な説明を伴って、ソフトをアップデートしています。
理由としては、事故を回避するためには、愛車の衝突被害軽減ブレーキの性能や作動条件などを、オーナーがしっかりと理解する必要がある。
そのために説明できるように、店舗で顔を突き合わせてのアップデートする事が大切だという認識からです。
こうしたトヨタの姿勢は、安全に対する誠意と言えます。
なぜなら、衝突被害軽減ブレーキはしょせん、機械であり、機械である限り、センサーやシステムのエラーをゼロにすることはできません。
だからこそ、自動ブレーキは「衝突回避」ではなく、「衝突(したときの)被害(を)軽減(するための)自動ブレーキ」と名乗っています。
あくまでも交通事故を防ぐ主体は、ドライバー。いくら先進運転支援システムが進化しても、運転の主体がドライバーであることは、この先も当分は変わりません。
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