前回、前々回のコラムでは、「ライフシフト-100年時代の人生戦略」についてお話ししてきました。
人生100年時代を背景に多様化が浸透し、様々な生き方が提唱されています。
アメリカでは個人事業主が3年ほど前に35%を数え、早晩50%になると予測されています。
日本でも「働き改革」の名のもとに、定年延長、副業を認めたり、週休3日の企業も出てきました。
しかしながら、日本の働き方改革の背景にあるのは、年金制度の崩壊防止と実失賃金の減少です。
今回はなぜ日本人に起業・副業が必要なのかを実質賃金の推移からお話ししたいと思います。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に対する不正調査の問題が、相変わらず国会で審議されています。
問題の本質は、官僚が統計を操作してでも「賃金上昇」を演出しなければならなかったことにあります。
なぜ、日本の賃金は上昇しないのでしょうか? 内的な要因と外的な要因に分けてお話ししたいと思います。
【外的要因】
1.90年代のITバブル崩壊による景気後退の影響
2. リーマンショック
3.コロナ禍
4.ロシアのウクライナ侵攻
など、多くの世界規模の危機があります。
しかし、欧米の先進国と比較して日本の賃金が低迷を続けていることは明らかです。
その原因は何なのでしょうか?
実際に、日本の賃金上昇の推移を見てますと、平成の30年間で上昇した賃金はわずかです。
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1990年の平均給与は425万2000円(1年勤続者、以下同)。
1990年以降、平均給与はしばらく上昇しましたが
1997年の467万3000円をピークに下がり始めています。
その後、ずるずると下がり続けて、2017年は432万2000円となりました。
1990年からの27年間で、上昇した平均給与はわずか7万円ということになる訳です。
実際に、日本の実質賃金の下げは国際比較をしてみるとよくわかります。
1997年=100とした場合の「実質賃金指数」で見た場合、次のようなデータになります。
(2016年現在、OECDのデータを基に全労連作成)。
・スウェーデン……138.4
・オーストラリア…… 131.8
・フランス……126.4
・イギリス(製造業)……125.3
・デンマーク……123.4
・ドイツ……116.3
・アメリカ……115.3
・日本……89.7
1997年から2016年までの19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇しているにもかかわらず、日本は1割以上も下落しているのです。
これらに加えて、原材料費・運賃・加工費などの高騰で相次ぐ値上げが予定されています。
ロシア制裁には無論痛みを伴わなければなりませんが、経済の回復には年単位の時間が必要ですし、賃上げは望めない状況が続くと予想されます。
【内的要因】
安倍政権は、史上最長の好景気によって有効求人倍率を大幅にアップさせ、新規雇用者数も増加させたと胸をはりますが、それが本当であれば、実質賃金の下落は説明がつきません。
日本の賃金が上昇しない原因については、さまざまなシンクタンクやエコノミストが分析していますが、大きく分けて5つです。
①労働組合の弱体化
②非正規雇用者の増加
③少子高齢化の影響
④内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者
⑤規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷
などです。
先日のTVでノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作首相が1970年代、沖縄返還に向け政治生命を賭けて交渉した経緯が放送されていました。
そこにあるのは決意と情熱と戦略です。政治家が政治家であった時代です。
残念ながら、現在では政治家は政治屋という職種になってしまい、経済の立て直しを通じて賃金の上昇を実現するためのリーダーシップを発揮する事すらできない状況です。
賃金労働者はこれらの状況を理解しているものの、解雇や配置転換、賃金頭打ちなど、自分に降りかかってくる可能性のある突然のアクシデントに対して十分な備えをしなければなりません。
品目ごとに安いスーパーをはしごする努力は大変なことですが、収入を以前のレベルに戻して、将来の生活設計を見直して、倹約では補えない不足分をどのような手段で補う必要があるかを考えなければなりません。
歴史は動かせませんし、日本経済にも不安要素がたくさんありますが、憂うことなく自身と家族の生活を守っていくために、将来を信じ、新たなキャリア作りをスタートしましょう。
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